人工木材は腐らない。本当か ?
人工木材、樹脂木材は腐らない、ノーメンテンスンというような記載がされていることがあります。もし良心的な製造メーカーであればパンフレットのどこかに小さな文字で但し書きが書いてあると思います。はたしてこのうたい文句のような素材でしょうか。はっきり言えることは世の中には完璧な素材というのは存在しません。どんな素材でも長所と短所があります。自分が利用する部分において、その部材の短所が許容範囲で収まるのか、その長所が活かされるのかによって選ぶべきです。
人工木材の長所短所スライドショーはコチラ。人工木材というのは 木とプラスチックの混合で多くは50%が木のオガクズです。このオガクズの部分は必ず腐ります。耐久性で言えば、天然木のウリンの方が長持ちします。
「樹脂木(じゅしもく)」、「合成木材(ごうせい)」、「人工木材(じんこう)」は、自然の木に似せてつくられた工業製品です。プラスチック系材料とオガクズ(木粉)をまぜたものと、プラスチック系材料に木以外のものをまぜたものがあります。各メーカーによって配合比率や利用する材料が異なります。木の配合が少ないと天然感、自然感が少なくなり、木の配合が多いと本当の木材に近い風合いになります。当社ではエクステリア材料としてキット商品では天然木材を使い、個人邸や店舗工事、大型工事、公共工事などでは、天然木材や人工木材を利用しております。人工木材を利用した施工経験年は業者の中では最も長いと思います。このようにどちらの材料も利用していますので、各々の長所欠点がわかります。ここではキット商品、あるいは自宅用のウッドデッキについて、人工木材の長所欠点について述べます。
上のものは中身も詰まったもの、価格が高くなります、下2つは多くデッキ部材に採用される中空のもの
腐らない、シロアリがつかない
主流の人工木材はポリプロピレンやポリエチレン樹脂を木粉(おがくず)を50%:50%程度の割合で混合しております。そかし木材の中の木粉の部分は腐りますし、シロアリにも侵されますが、このことはあまり一般的には公表されていません。そして人工木材は腐らないという誤解が生まれています。 人工木材の製造メーカーの仕様書にも、『腐朽菌による質量減少率1.5%、シロアリの食害による質量減少率0.6%』という数値が記載されています。ただ、この値は一般的な木材と比較すれば非常に低い値です。
イエシロアリ兵蟻 正面 イエシロアリ兵蟻の横顔
木材の種類によってこの数値は変わります。ちなみに最強の木材であるウリンは人工木材よりも腐朽菌による質量減少率が低い木材です。つまりウリンは人工木材よりも腐りにくいということです。別な言い方をすれば、人工木材は腐りにくい、シロアリが付きくい、しかしウリンはそれ以上に腐りにくい、シロアリがつきにくいということです。これらは、京都大学木質科学研究所(現 京都大学生存圏研究所)にて3回行った腐朽促進試験の結果から判明しました。写真は今村教授の研究より。
イエシロアリ兵蟻の横顔
イエシロアリ兵蟻の正面
京都大学での委託試験の結果
木材の耐久性を確認するためには屋外に設置すれば誰でも分かりますが、結果が出るのが数年~30年先になってしまいます。
そのため、試験室で結果が出るようにしたのがJISで規定されている腐朽促進試験です。
木材のピースをガラス瓶の中に腐朽菌と一緒に入れて、恒温室に数か月入れた後、木材の質量の減少率を計測すると言う方法です。
当社では新しい材種を商品に加える場合は、これまでの材料も含めて、この試験をするようにしています。
ただ試験費用が数十万円かかるのが痛いところです。
この試験から分かることは次のとおりです。
ウリン、合成木材(人工木材)、イペ、アマゾンジャラ等の、以前から屋外での耐久性が高いと言われている木材は2つの腐朽菌のどちらの場合でも高い耐久性があります。
以前からハードウッドの中では耐久性がないと言われているセランガンバツは、やはり、屋外のデッキに使えるような材料ではないと言うことが試験上はっきりしました。
一般的に腐らないと言われている合成木材よりもウリンの方が耐久性が高く(合成木材も半分は木ですからやはり腐ります)、また、合成木材(人工木材)はイペやアマゾンジャラと比べても、特に高いと言うレベルではないことが分かりました。
耐久性が非常に高いと言う人と、いやそれほど高くないと言う人に分かれていたレッドシダーと加圧防腐処理木材については、2種類の腐朽菌では全く違う結果となりました。
つまり、腐朽菌の内、乾いた環境で腐朽をもたらすオオウズラタケの場合はレッドシダーは抜群の耐久性を示し、反対に加圧防腐処理木材は良い結果ではありません。
しかし、湿った環境で腐朽をもたらすカワラタケの場合は加圧防腐処理木材は抜群の耐久性となり、レッドシダーは良い結果ではありません(それでも国産の桧よりも上ですが)。
しかし人工木材の耐久性がウリンやイペ並み程度で、設置された状況が南側の乾燥した場所であれば、かえって耐久性が低いので、色あせよりも耐久性を重視する官公庁の物件に関しては、考えを変える必要があります。
干割れ、ささくれ、が生じません。
天然の木材は屋外では必ずワレが発生します。ささくれも程度の差はありますが発生します。一般的な中空の人口木材の場合はなんらかの衝撃で穴があくことがあります。
色褪せない
無垢の木材、天然の木材と比較して限りなく遅いですが、色褪せはします。
静電気
静電気がどのような作用を及ぼすのかここでは述べませんが、冬場には静電気が発生しやすいです。
膨張
多くの人工木材は熱や水分による膨張率が無垢材と比較して極めて高いものが多く、無垢の木材ではほぼありえない長さ方向へも膨張します。そのため予期しないひずみなどが発生し、専門の業者が施工しても後にクレームを受ける事があります。きちっと精度の高い枠内にウッドデッキ床板をならべている場合は変形して凹凸ができる可能性があります
公共工事の例 手すりが熱膨張でゆがんでしまいました。木材では長さ方向には膨張しません。
夏には表面が高温になる
高温になるのは濃い色のためという解説もあります。これは間違いではありませんが、正しくもありません。たしかに色によって変わります。天然木も熱くなります。しかし、プラスチック系材料と木の材料では元々の断熱性能が異なりますので、当然人工木材の方が高熱になります。逆に冷たさについても同じことが言えます。木材の中ではソフトウッド(針葉樹)とハードウッド(広葉樹)とでは大きな断熱性能の開きがあります。20-30センチのサンプルを炎天下で1時間ほど、あるいは冷蔵庫の中にしばらく入れたあと、とり出して、実際に触ってみればわかります。
いつまでも綺麗
この言葉はあてはまらないでしょう。屋外での雨ざらし状態では「汚れ」という劣化が生じ、経年変化が少ない分、かえって汚れが目立ちます。人の目で見て、何か違和感を感じるのは、このところに原因があるのでしょう。
強度がある
一般的な人工木材の多くは中空構造となっています。この構造により無垢材には考えられない、致命的な欠点が発生することがあります。それは「床板などが衝撃に弱い」という事実です。重い物を落としたり倒したり、先の尖ったもので突くと、簡単に穴が空いてしまいます。それは当然ですね。天然材の繊維質でつながっているのではなく、木やプラスチックの粉状を接着剤でかためているわけですから3mm~10mmぐらいの厚みではもろいですね。穴が開いてしまうと、雨水などが浸入しさまざまな問題が起こります。また、製作ではほとんどの場合、端から板を置き、金物で固定し、また次の板を置くという作り方で固定するため、デッキの真ん中の穴の開いた床板の交換となると、端から板を外していかないといけないという大変さと非常に手間のかかる作業でありコストがかかります。
支柱の上部に力が加わったため、穴が開いています。手前の横木は退色しています。
ノーメンテナンス
メンテナンスというのは何をさすのでしょうか、もし塗料を塗るということであれば、ウリンやアマゾンジャラでは塗装する必要はありません。
製作が簡単
作成現場ではいろいろな事が発生します。それに柔軟に対応できるのは天然木材です。人工木材は工業製品で手順通りに作らなければならない宿命です。手順、途中で何かミスをすれば完成させることは出来ず、最初からやり直さないといけません。
エコ商品
地球にやさしい、環境に配慮した商品という、うたい文句の商品は世の中に多数でていますが、木をターゲットにするもの、木の代替え商品となるものには、その内容が事実でないか、全体を見ていない場合(木を見て、森を見ず)が少なからずあります。
再生されて人工木材が出来たのだから、エコロジーという理屈で、宣伝されています。でも考えみると、天然木材は自然に戻りますが、人工木材は中のプラスチックは自然に戻りません。
またもともと木材、樹木は再生するもので一番のエコロジー商品です。
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